プリテンダー
「この先もずっと杏といたいと…その気持ちに嘘はないと、君は言ったな?」

「…はい、言いました。」

「それでは後は当人同士の問題だ。二人でよく話し合って考えてくれればいい。信幸もそれで良いな?」

ずっと杏さんの隣で黙っていた男の人が、少し嬉しそうに笑ってうなずいた。

「ええ、お父さんがそうおっしゃるのなら。」

お祖父様がこの人のお父さん…って事は、この人は杏さんのお父さんか!!

なんかもうえらいことになってるよ…!

隣を見ると、ばあちゃんがニコニコして僕と杏さんを見ている。

「良かったわね、章悟。」

良かった…のか?

いや、ちょっと待て。

僕は肝心な事を忘れている。

お祖父様やお父さんが許しても、僕が杏さんを好きでも、杏さんが僕を好きでなければどうにもならないじゃないか!!

なんか気まずくて、杏さんの顔を見る事ができない。

「それにしても疲れた。ワシは休む事にする。信幸、弥栄子さんと鴫野くんを家にお連れしなさい。」

「わかりました。」




< 222 / 232 >

この作品をシェア

pagetop