プリテンダー
ソファーに向かい合って座り、メイドさんが運んで来たコーヒーを二人とも黙って飲んだ。

何から話せばいいのか。

僕はどうしたいのか。

杏さんはなんと言うのか。

とりとめもない考えが頭の中をグルグル駆け巡った。

カップをソーサーの上に静かに置いて、杏さんがゆっくり顔を上げた。



そして、今に至る。


「久しぶりだな…。」

「そうですね…。」

やっと会話をしたと思ったら、またしばらくの沈黙。

「元気だったか?」

「あまり元気ではないです。」

ぎこちなくはあるけれど、なんとか会話しようとしてくれてるのかな?

杏さんはまだ少し気まずそうに目をそらしている。

「元気じゃなかったのか?」

「寂しかったです。」

杏さんはまたうつむいて黙り込んでしまった。

照れてるんだ。

そういう顔、やっぱりかわいい。


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