プリテンダー
僕は思いきり杏さんを抱きしめた。

「ずっと言いたかった。僕も杏が好きだよ。」

杏さんの唇に、そっと唇を重ねた。

ほんの一瞬触れ合うだけのキスに、心が温かく満たされる。

「偽物じゃなくて…今度は、本物の恋人になろう。」

耳元で囁くと、杏さんは小さくうなずいた。

僕の腕の中で、杏さんが照れ臭そうに笑った。

その笑顔がかわいくて、杏さんが笑ってくれた事が嬉しくて、もう一度キスをした。

「お弁当作るから、また一緒に遊園地に行こう。」

「うん。」

「今度は観覧車にも乗ろうね。」

「うん、乗りたい。」

「これからはふりじゃなくて、杏にだけ優しくしてあげる。」

「…うん。」

「杏、大好きだよ。」

「章悟…私も好き…。」

抱きしめて、髪を撫でて、何度も優しくキスをした。

幸せで温かくて、胸がいっぱいになる。


「ずっと一緒に御飯食べよう。毎日、杏のために美味しいものたくさん作るから。」

「うん。毎日章悟と一緒に、章悟の作った料理食べたい。」

杏さんは僕の手を握って穏やかに微笑んだ。


< 231 / 232 >

この作品をシェア

pagetop