プリテンダー
「ふーん、そうか…。でも今更そんな事聞いてもな。2年もそれに気付かなかった僕も悪いわけだし。」

取り乱してもカッコ悪いだけだ。

美玖とは終わったんだし僕にはもう関係ない。

「鴫野くんは悪くないよ。」

渡部さんは必死な顔をして僕をかばう。

「もういいって。そんなふうに思われてたって知らなかったけどさ…美玖のいない所で陰口みたいなの、いい気しないよ。僕は好きだったし?」

「ごめん…私、そんなつもりじゃ…。」

渡部さんは僕を気の毒に思ってくれただけで、きっと悪気はないんだろう。

余計なお世話だと思わなくもないけど、彼女を責めても仕方ない。

「もう行くよ。」

僕が会議室を出ようとすると、渡部さんは僕の腕を掴んで引き留めた。

「待って鴫野くん!あのっ、私ね…。」

「何?」

振り返った瞬間、渡部さんが僕の胸に飛び込んできた。

その勢いに押されて、僕の体は壁際に追いやられる。


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