プリテンダー
え、なにこれ?

壁ドンとかいうやつ?

さっぱり状況が飲み込めない。

「あのー…渡部さん?」

「私、入社してすぐの頃からずっと、鴫野くんが好きだったの!」

「……ハイ?」

「あの合コンの時もホントは鴫野くんともっと近付きたかったのに、私は幹事だったから…なかなか話せないでいるうちに、いつの間にか美玖に鴫野くん取られちゃって…。」

何を血迷ったか、渡部さんは僕の胸にしがみついて、よくわからない言葉を並べたてる。

「えーと…渡部さん、一旦落ち着こうか。」

他に誰もいないとは言え、とりあえず会社でこれはまずい。

誰かに見られたら変な噂を流されかねない状況だ。

離れて欲しいのに、渡部さんはますます強く僕にしがみついた。

「好きなの!!私と付き合って!!」

どうしようか。

まさかの展開に頭が追い付かない。

「いや、あのさ…。気持ちは嬉しいんだけど、何日か前に美玖と別れたばっかりだし…。」

「もう別れたんだからいいでしょ?私、2年間ずっと我慢したんだよ。」

そんなこと言われてもな…。

いい子なんだけど、いきなり過ぎてわけわかんないよ…。


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