プリテンダー
イタズラ心に火が点いて、僕はされるがままになるのをやめた。

渡部さんの頭を引き寄せ、深く口付けて舌を絡めた。

彼女は驚いて目を開き、一瞬ビクッと肩を震わせたかと思うと、また目を閉じて僕の激しいキスに必死で応えようとした。

僕が舌を動かすたびに肩を震わせながら吐息混じりに漏らす小さな声が、結構エロい。

嫌がらないとこを見ると、この間まで友達の彼氏だった男に、こんなふうにされる事を期待してたんだ。

きっと2年もの間、僕と付き合っている美玖を恨めしくも妬ましくも思いながら、友達のふりして、つけ入る隙を狙ってたんだろう。


女ってわからない。


ちょっと気分が盛り上がって、軽く胸に触れてみたりなんかして。

それでも渡部さんは抵抗しない。

おいおい、いいのかよ。

こんな所でこんなことされて、ちょっとは抵抗しろっての。

美玖以外の女の子にキスするのも、体に触るのも久しぶりだ。

…夢の中を除いては。


久しぶりだし、もうちょっと楽しませてもらおうかな?


…なんて考えていると、突然会議室のドアが開いて、杏さんが姿を現した。


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