プリテンダー
……何やってんだか。

僕はこんな人間だったか?

いくらなんでも会社でこんなの有り得ない。

しかも直属の上司の杏さんに現場を見られてしまった。

この間彼女にフラれて散々醜態晒して迷惑かけたとこなのに。

顔、合わせづらいな。

……ん?

しまった!!

今日は杏さんの弁当持ってきてるんじゃないか!!

マジで最悪だ。

どんな顔して一緒に弁当食べるんだよ?



重い足を引きずって、書類とパソコンを手に部署に戻った。

デスクに荷物を置いて、弁当の入ったバッグを手に試作室に行くと、既に杏さんが待っていて怯んでしまう。

「やっと来たか。」

「すみません…。」

さっきあんなところを見られたばかりで、杏さんの顔がまともに見られない。

ばつが悪いって、こういう事を言うんだな。

バッグから弁当とスープポットを取り出して杏さんに差し出した。

「どうぞ…。」

杏さんは黙って弁当の蓋を開ける。


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