プリテンダー
もう一度、強めに体を揺する。

「杏さん、起きてください。」

「うーん…目標、客単価100万円!!」

ないない、いくらなんでもそれはないから。

思わず吹き出してしまった。

杏さんの見てる夢がちょっと気になる。

笑いを堪えていると、杏さんがゆっくりと目を開いた。

僕の顔を見ると、杏さんは驚いてのけぞった。

「う…わぁ!!」

ゴツン!!

鈍い音がした。

どうやら杏さんが床に頭を打ち付けたようだ。

「大丈夫ですか?」

あまりにひどい音がしたので、咄嗟に杏さんの頭を触った。

杏さんは身構えて顔を強ばらせた。

僕は警戒されてるらしい。

…当たり前か。

「そんなに怯えないでください。何もしませんから、打った所、見せてください。」

杏さんは何も言わずじっと身を固くしている。

頭を触って調べてみたけど、どうやらコブにはなっていないみたいだ。

「大丈夫みたいです。」

「ああ、うん…。」

僕が手を離すと、杏さんの体から一気に力が抜けるのが見て取れた。


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