プリテンダー
とりあえずリムジンを降り、杏さんと一緒に歩いて、マンションのエントランスに足を踏み入れた。

深々と頭を下げていた黒服の男の姿が見えなくなって初めて 、僕はようやくまともに呼吸ができた。

「あのー…杏さん?ここはもしや…。」

僕から腕を離した杏さんの顔からは、さっきまでの笑顔が消えていた。

「私の住んでいるマンションだ。とりあえずうちに来い。」

あ…すっかり元の杏さんだ。

さっきの杏さん、かなりかわいかったのに。

もうちょっとあのまま甘えていて欲しかったかなー、なんて思ってみたりして。

なんか残念。

………って。

何を考えてるんだ、僕は?





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