プリテンダー
二人のルール
翌日の夜。
定時で仕事を終えた僕はスーパーでたくさんの食材を買って、今日から僕の住まいともなる杏さんの部屋に帰った。
食材を冷蔵庫や床下収納庫にしまい、キッチンで夕飯の支度をした。
キッチンは好きに使っていいと杏さんから許可を得ている。
それにしてもすごいシステムキッチンだ。
これを使っていなかったなんてもったいないとしか言いようがない。
僕がここにいる間は目一杯使ってやろう。
まぁ、どれだけ立派なキッチンを使っても、僕が作れるのは庶民の料理なんだけど。
いつの間にやら僕の荷物は杏さんの部屋に運び込まれ、綺麗に整理されていた。
冷蔵庫にあった食材は冷蔵庫に、たくさんの調理器具や調味料もキッチンに綺麗に収められている。
杏さん一人で暮らすには広すぎる部屋には空き部屋がいくつもあって、杏さんはそのうちの一番広い部屋を僕の部屋にしてくれた。
それにしても無駄に広い。
庶民の僕は、掃除が大変そうだというデメリットしか思い浮かばない。
昨日、無理して定時で仕事を切り上げた杏さんは、今日は残業で帰りが遅くなるらしい。
それでも、遅くなっても必ず帰ると杏さんは言っていた。
ホントかな?
いつもみたいに、オフィスの床で寝転がって社泊…なんて事にならなきゃいいけど。