プリテンダー
食事を終えると、杏さんはお風呂に向かった。

その間に僕は洗い物を済ませた。

杏さんが入浴を済ませてリビングに戻って来たので、僕もお風呂に入ろうと浴室に向かった。

もちろんなんだけど、浴室も無駄に広い。

お風呂掃除も大変そうだ。

ここにいる間、家事全般は僕がやる事になっている。

このゴージャスなマンションは、杏さんの所有物なんだそうだ。

僕が家事をする分、食費や光熱費は杏さんが払ってくれるらしい。

昨日、二人で簡単に決めたルールだ。

杏さんは普段、下着以外の洗濯物をすべてクリーニング業者に頼んでいると言っていた。

だから昨日までこの部屋には、洗濯機というものがなかった。

洗濯機だけでなく、料理をしないからか冷蔵庫もなかった。

飲み物とかどうするんだろうと思ったら、ウォーターサーバーは完備だし、ドリンク用の小さな冷蔵庫がリビングやベッドルームなど各部屋に備え付けてあるらしい。

さすが、超高級マンション。

庶民の僕には理解できない、無駄な便利さ。

浴室についてるミストサウナとかジャグジーとか、こんなの必要か?

とりあえず今日からこの部屋には、僕の部屋から運び込んだ冷蔵庫と洗濯機がある。

庶民の僕が家事をするには必要なものだ。

この広さが無駄だと思ったけど、広い浴槽で思いっきり足を伸ばしてお湯に浸かれるってとこだけは、悪くないな。


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