プリテンダー
そんな事を思っていた矢先。

今一番会いたくない人と顔を合わせる事になってしまった。

午後は広報部が新商品の出来映えを写真におさめに来ることになっていた。

茹でた絹さやを散らした事で、ほんの少しは見映えが良くなった。

けれど、広報部としては物足りないみたいだ。

「煮物メインじゃ、やっぱり地味ですねぇ。もう少しなんとかなりませんかね?」

「メインを変えるとなると、栄養価がまた変わってきますからね。見映えの点では、かなり手は尽くしたんですけど。」

「うーん…。もう一押し欲しいなぁ。」

簡単に言うなよ。

見映えさえ良ければいいってもんじゃないだろう?

味と栄養価は間違いないっつうの。

「シニア向けですからね。派手さより中身が大事なんです。これくらいの落ち着いた見映えの方が、美味しそうだと思うかも。」

ばあちゃんがこの料理を見たら、なんて言うだろう?

シニア向けの商品はシニア世代の人に見てもらうのが一番だと思うけど、広報部はよりによって、なんでこんな若いのを寄越すんだ。



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