痛くて愛しくて、抱きしめたい
もてあます劣情
タイショーが教育実習でやってきて、4日が過ぎた。
その間、わたしたちに会話らしい会話はほとんどなかった。
「しつもーん!」
さわがしい教室で、ひとりの女子が手を挙げる。
「瀬戸先生は、彼女いないんですかー?」
ミーハーな話題に、きゃっきゃと周りの女子から黄色い声が上がった。
「君らねぇ‥‥‥ちょっとは勉強に関する質問してくれよ」
タイショーが困った顔で反応すると、黄色い声がよけいに大きくなる。
今日は、指導係のオバチャン教師が急用で不在。
つまりタイショーがひとりで授業をしているから、みんな好き放題ってわけだ。
‥‥‥変なの、とわたしは思った。
みんな、タイショーなんかに騒いじゃってさ。
タイショーも先生ぶって、変なの。昔と全然キャラがちがうじゃん。
わたしの知ってる彼は、高校生で、髪が茶色くて、改造した原付に乗っていて。
今みたいに黒髪じゃないし、もっと意地悪な性格で。
みんな、そんなことも知らないでしょ‥‥‥。
「じゃあ、先生のファーストキスはいつですかー?」