痛くて愛しくて、抱きしめたい

パチパチと教室中から拍手が鳴り響く。

みんなに見送られながら、タイショーは教室を出て行った。


2週間の教育実習が、こうして幕をおろした。







その日の夜、わたしは4年ぶりにある場所をおとずれた。

あいかわらず広い駐車場と、その向こうに見えるビル。

外壁を飾る看板は、あの頃と少し変わったけれど、映画館の名前は変わらずあった。


わたしはあの夜と同じ縁石に座り、バッグからスマホを取り出した。

今から表示しようとしている番号は、発信履歴の中にはない。なぜなら、最後にかけたのが4年も前だから。

わたしは電話帳をスクロールして、その番号を見つけると、画面のボタンを押した。

呼び出し音が耳元で流れる。3コール目で、相手が電話に出た。


「もしもし?」


わたしからの電話に驚いているのか、少し上ずった声。

わたしは深く息を吸った。

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