痛くて愛しくて、抱きしめたい
見ると、それはわたしの大好きなミルクキャラメルだった。
わたしは目を丸くして、タイショーに視線を戻した。
「ナイスキャッチ」
そう言って笑ったタイショーの顔は、姉の恋人だってことを忘れるくらい、わたしだけに向けられている
‥‥‥‥ように見えて。
やっぱり、こんな男が教師になったら大変だ。
あの時そう思ったんだ。
* * *
放課後。職員室へ行き、没収されたスマホを返してもらった。
もしかしたら職員室には彼がいるかもしれない、と思ったけど予想は当たらなかった。
ひとりで校舎を出て、放課後の中庭をとぼとぼ歩く。
‥‥‥結局、一言も話さなかったな。2限目の授業で再会してから、目すら合うことなく一日が終わってしまった。
あかの他人のようだった彼を思い出し、胸が重くなってくる。