痛くて愛しくて、抱きしめたい
しばらく、夜空を眺めていた。
街の明かりのせいで、星はほとんど見えない。
代わりに秋の三日月が、冴え冴えと白く輝いていた。
ビル内のお店が閉店になったのか、駐車場からどんどん車が減っていく。
わたしもそろそろ帰ろう。そう思い、立ち上がったとき。
「葉月!」
突然の大声が、夜の空気を震わせた。
驚いてまわりを見まわすと、道路をはさんだ向かいの道から、タイショーが叫んでいた。
「何だよお前、あの言葉は!」
「え?」
いきなり現れてビックリしている上に、言っている意味がわからない。
うろたえるわたしに、彼が横断歩道のむこうから続けた。
「色紙、あれ、お前だろ!」
「あ‥‥‥」
ようやく理解できたわたしは、朝のことを思い出す。
色紙のすみにひっそりと、自分の名前すら添えず、書いた言葉。
【ごめんね】