痛くて愛しくて、抱きしめたい
「何が“ごめん”だ、こないだは俺にスル―しろって言ったくせに!」
「だ、だって‥‥‥っ」
だって、タイショーはわたしに再会したくなかったんでしょう?
だから距離をおかなきゃと思った。必死に強がって、タイショーをはねつけた。
でも、最後に贈る言葉だけは、ちゃんとあやまりたくて―――。
「なんでお前があやまるんだよっ!」
横断歩道が青に変わった。
タイショーが怖い顔で、こちらに向かってくる。
距離が縮まる。
わたしは、とっさにきびすを返した。
彼から逃げだした。
どう向き合えばいいのかわからなかった。
息を切らし、駐車場を走った。
「葉月!」
あれ‥‥‥何だろう? これに似たことが、以前にもあったような。
ふとそう思った、次の瞬間。
駐車場の死角から、ぬっと一台の車が現れた。
「葉月―――っ!」