痛くて愛しくて、抱きしめたい

「‥‥‥俺も」


タイショーが泣き笑いの顔で、わたしを見つめながら言った。


「俺もたぶん、あの頃、お前のことがちょっと好きだった」


わたしはクスッと笑った。同時に涙がこぼれた。

じゅうぶんだ、と思った。



ねぇ‥‥‥タイショー。

わたしたちは昔も今も、弱くて、不器用で、けっして交わらない場所にいて。

けれどそんなふたりの中にも、お互いを大切に思う気持ちは、たしかにあった。

そうなんでしょう?


だから、もう、じゅうぶんだ。



「ありがとう」

タイショーが言う。


「ありがとう」

わたしも言った。


ありがとう‥‥‥バイバイ。
初恋の人。


やっと、失恋できたよ。

やっと、埋もれてたモノを見つけたよ。


わたしはやっと、前に進める。



















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