痛くて愛しくて、抱きしめたい
そんな中、おひとり様のわたしは、堂々と胸をはって列に並ぶ。
チケットカウンターは5つあるけど、どれも長蛇の列。
カップルたちから聞こえてくるのは、甘い恋愛映画のタイトルばかりだ。
「おまたせしました。ご希望の作品名をどうぞ」
ようやく順番がやってきた。
わたしのお目当ては、リバイバル上映中のアクション映画。もちろん、メッタメタのギッタギタなやつ。
わたしは電工掲示板を見上げ、スウッと大きく息を吸いこむ。
「燃えよドラゴン」
「燃えよドラゴン」
そのとき何の偶然か、横の列の人と見事に声が重なった。
「え?」と思って見ると、相手も「え?」という顔でこちらを見ている。
わたしと同じ歳くらいの、短い髪をした男の子。
「あ、どうも」
「あ、どうも」
わたしたちは同時に軽く会釈し、そして、同時にプッと笑った。
‥‥‥‥‥この広い世界で
もしも大切な人に出逢えたら、それは何パーセントの奇跡だろう。
-END-
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レビューありがとうございます!
葵翼さん
木野沙織さん
愛華さん
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