痛くて愛しくて、抱きしめたい
やっぱり、タイショーはわたしに再会したくなかったのかもしれない。
だったらわたしも、知らないふりをするべきなのかもしれない。
そう思うと、心が暗雲に覆われたように暗くなった――そのとき。
「あーっ!」
突然の強い風と、同時に頭上から大声が響いた。
見上げると、一枚のプリント用紙が宙を舞っていて、それをつかもうと必死で窓から手を伸ばしている人の姿があった。
「ごめんっ、拾って!」
「えっ‥‥あ、はい!」
プリントは風にあおられながら、ひらり、ひらりと地上へ近づいてくる。
わたしもつられるように、それを目で追いながら移動する。
あと1メートル、あと30センチ、あと10センチ‥‥‥
思いっきり腕を伸ばし、手を開いて。
――つかんだ!
と喜んだのもつかの間、勢いあまって中庭の木に激突してしまった。
「痛ったぁ‥‥‥」
打ちつけた後頭部をさすりながらも、プリントはしっかりつかんで、はなさないわたし。
絶対、はなしてなるものか。
「ナイスキャッチ」
二階の窓から、タイショーが笑った。