血を喰らう鬼は赤く染まる桜。
「カナ。お参りして。」
明子さんの父の写真が飾ってある。
つまり、あたしのおじいちゃん。
座布団に座り、見よう見まねで手をあわせる。
(こーゆーの、はじめてだ…)
明子さんは、こちらを見ない。
縁側に座ってぼんやりとしてる。
春の風が吹いた。
不思議な空気に包まれた気がした。
夕空の雲が不思議なピンクとネイビーブルーのマーブル模様に染まって。
これまで暮らしてきた日常は、ゆっくりと変わっていくんだろうな。
きっと、あたし達の関係も。
心も。


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