血を喰らう鬼は赤く染まる桜。

ばさり。
彼女はマリオネットの糸が切れたように背中をのけぞらせて。
意識を失ったようだ。
彼の細い腕だけで、全体重をささえられているから、危うく木から落ちてしまうんじゃないか、なんて心配をして。
はっと我にかえると、少女の背中に隠れていた少年が、こちらを見ていた。
透き通るような白い肌は、少し...病的に見える。
細く、だけど上質な筋肉をまとった体。
赤い液体が、唇から首筋に、そして鎖骨へと、ゆっくりとなぞりたどる、その姿に。
また、あたしの瞳は捕われる。
肩まで伸ばした無造作な黒髪は乱れていて。
ぐしゃぐしゃで。
どうしてだろう？
どうしようもなく、動物的な魅力を感じる…の。
野生の、血。
そして、なにより。
長い前髪の隙間からのぞく真っ直ぐな瞳が。