血を喰らう鬼は赤く染まる桜。
「明子さん」
あたしは母を、ママ…とか、おかあさん…って読んだ事がない。
彼女はいつも、テレビのブラウン管のなかにいた。
「…何?」
けだるげに長い髪が揺れる。
「あとどれくらい?」
「…20分くらいかな。」
「そう…。」
会話はそこで途切れてしまった。
あたしと母の会話なんて、いつもそんな感じ。
彼女はいつも、雑誌のなかにいたし。
ゴシップ紙の華やかな恋愛ネタとか。
どこまで本当かは、わからないし、知りたくもない。
だけど、あたしは…




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