そして俺は、君の笑顔に恋をする






「なあ」



「・・・」



「おーい」



「・・・」



「どこに行くんだよー」





工藤は一人でてくてく歩く黒瀬の後を追っていた。





伊波が帰ってからほどなくして、彼女はマンションから出てきた。


いつもの見慣れた制服ではなく、私服で。


今日は土曜。


出かけると言っていたから予想はしていたが、工藤はその姿に一時目を奪われる。


ブラックのオフショルダーに白いスキニー、黒のハイヒール。


黒を基調とした大人っぽい服装だ。


薄く化粧もしているようで、その姿はとても高校生には見えなかった。




彼女はエントランスから出てくるときょろきょろと辺りを見渡す。


そして工藤の姿を見つけると、つかつかと前に出てきてぽかんとしている工藤の顔をまじまじと見つめた。



「ん、昨日よりはましね」


「へ?」


「じゃ行くわよ」



黒瀬はそれだけ言うと一人でに歩き始め、今の状況になっているのである。






休日の朝は人が少ない。


しかもまだ六時前だ。


人がいなくて当然。


だいたいこんな早くから空いてる店も何もないはず。


彼女は一体何処に向かってるんだろうか。






「なあ」



「・・・」



「なあ、黒瀬さん」



「・・・」



「どこに向かってるかぐらい教えてくれても」



「・・・」





どれだけ聞いても、黒瀬はなんにも答えない。


工藤はあきらめ尋ねることを諦め、ただ黙って彼女についていくことにした。






黒瀬はそれから電車に乗った。


そのまま電車は、都心ではなく校外の方へ向かっていく。


がたんごとんと揺られながら、徐々に建物ばかりのものから緑の溢れるものに変化していく窓の外の景色をじっと見つめる黒瀬。


工藤は離れた場所から彼女の横顔を見つめ、どこかも知らぬ目的地につくのを気長に待つのだった。





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