そして俺は、君の笑顔に恋をする

「言いなさいよ、ねえ!!!」


「おい、黒瀬…黒瀬っ!」



何も言わない男に思わず殴りかかろうとした黒瀬の拳を工藤が慌てて止める。



「離してっ!!!」


「コイツはプロだ!そんな脅しじゃ口は割らない!」


「じゃあどうするのよっ!!!」


「落ち着けっ!!そして話を聞け!!!!」


「ッ!!」



興奮状態の黒瀬に、工藤が声を荒げた。



「このまま警視庁に連れていく。プロにはプロだ、突っ走るな黒瀬」


「でもッ」




その時だった。




ぞくりと背筋に寒気が走る。


これまで何度も感じてきた



心臓を握られてるような不愉快な悪寒




(これは、…!!)



気づいた瞬間、工藤の中でけたたましく警報が鳴り始める。





「黒瀬伏せろっ!!!!」


「え、」



工藤が叫ぶのと同時に、パァーン!と乾いた音が人気のない路地に響いた。






銃声だ。


はっきりとそれが分かった後、立て続けにパンパンパンと三発銃声が響く。


工藤はその三発の間に、動けずにいる黒瀬を押し倒し頭を抱え込んで盾になる。


うち一発が、つけていた男の胸に当たったことを確認した工藤は「クソッ」と舌打ちをした。


銃声が僅かに止んだ一瞬を逃さぬよう工藤は立ち上がり、黒瀬を引っ張り上げて走り出す。



「な、何ッ」


「何も考えるな、走れッ!!!」



そのまま、銃声に気付きざわざわとし始めた人混みの中に突っ込み、道路脇に止まっていたタクシーに乗り込む。



「出せっ」


「えっどどどちらまで…」


「いいからっ!!!」


「はっはいいぃ!!」



工藤は窓越しに後ろを確認する。



(追っては来てないな…)



恐らくあの男は死んだだろう。


あれだけ目撃者がいたのであれば通報もされているはず。


とりあえず、黒瀬を安全な場所に連れていかなければ。


そう考え、隣の黒瀬を見ると息を乱しながらも左足を押さえている。



「…おい、見せろ」


「ちょっ!」


「やっぱ当たってたか…」



かすり傷だが手を真っ赤に染める程度に出血している。


工藤は懐から取り出したハンカチを使って応急処置をしながら、小さな声で「…ごめん」と頭を下げた。



「…何で謝るの」


「……守れなかった」


「そんな…」


「痛かったよな、ごめん…今から向かう場所は安全だから。そこでちゃんと治療する。だからもう少し我慢してな」



そう言って工藤は優しく黒瀬の頭を撫でる。


黒瀬は何も言えずぼーっと工藤の顔を見上げていた。



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