そして俺は、君の笑顔に恋をする





つけられていないことを慎重に確認しながら、工藤はマンションに帰る。



ガチャ


「ただいま」


「にゃーー!!」


「ぎゃー!!!オリオン、また、お前ええー!!!」


もはや、工藤にとっては日常茶飯事、毎回の恒例行事となっているそれに尽きやってやりながら、工藤は部屋の中に入った。



「こらっオリオン、おいで!」



すると気が付いた黒瀬が慌てて奥の方からやってくる。


その声に反応し、興奮しきっていたオリオンは健気にも黒瀬の元に素早く駆け寄って、彼女の腕の中にくるりと納まった。



「おかえりなさい、工藤さん」


「イッテェ…ただいま。変わりなかったか?」


「うん。オリオンもいい子に待ってた」


「ニャ~~ゴロゴロ…」



オリオンの態度の変わり様に工藤は顔を引きつらせながらも、意外に元気そうな黒瀬の様子にほっと息をつく。


実のところ心配していたのだ。


覚悟していたとはいえ、突然命を狙われ、知らない場所に移り住み、元々彼女が住んでいた場所は爆破された。


そんな状況で彼女の心は平常でいられるのか。



だがそれも杞憂なようだ。


(彼女は強い…だから、きっと大丈夫)


復讐に燃える人間の瞳は、いやと言うほど知っている。


彼らはけして諦めない。


その歪んだ信念をヒトは間違いだと知りながらも糧にして、強くなるのだ。


折れそうな心を必死に保つために。



彼女もその一人。


だから大丈夫。


まだ、大丈夫なはずだ。





工藤は上着をソファに放り投げ、部屋の隅に置いてあったノートパソコンを引っ張り出し机に広げた。


黒瀬は興味深そうにのぞき込む。



「…それは?」


「黒瀬のうちの辺り周辺の監視カメラ映像だ。不審人物が映ってないか一応確認をね」


「…私も一緒に見ていい?」


「ああ。黒瀬が辛くないなら」


「……ありがと」



黒瀬は小さくそう言ってオリオンを抱えたまま、工藤の隣に腰を下ろした。


パソコンの画面に映るいくつもの映像を二人は黙って見続ける。


特に不審な動きをする者もおらず、気づけば数時間が経過していた。



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