そして俺は、君の笑顔に恋をする
...
話によると、ハナは黒瀬が住んでいたマンションの部屋から炎と煙が上がる光景をテレビのニュースで見て、居ても立ってもいられずに警視庁に駆け込んだらしい。
そしてその事が工藤の元に伝えられ、ここに連れられたのである。
「まったく、無事で何よりだけど電話くらい入れなさい!心配したでしょう?」
「うん…ごめんなさい…」
そりゃ普通は心配するか、と工藤は申し訳なさそうに頭をかいた。
「叱らないで上げてください。俺の判断なんです、彼女はそれに従ったまで。全ての責任は俺にあります。申し訳ない」
そう言って頭を下げる工藤に、「そうなのね…」とハナはため息を付く。
「まったく。変なところばかりあの人に似てきて…大事なことは何にも話してくれないんだから」
ハナはぷうと頬を膨らませる。
誠一郎もそうだった。
肝心なことは何も言わず、自分は除け者。
どんなに危険に巻き込まれてもけして何も話そうとはしなかった。
理由があることは分かる
自分を巻き込みたくなくてそうしたのも理解しよう
でもだからって、彼が亡くなった今、妹までみすみす死なせるわけにはいかないのだ。
「凪ちゃんたちが何を隠して何に巻き込まれているかは知らないし、それに深入りするつもりもないけど、私がいることを忘れないで。家族なのよ、心配しないわけないんだから」
「……ごめんなさい…」
珍しくしゅんとする黒瀬の頭をハナは優しく撫でる。
二人のその様子を、工藤は何も言わずに黙って見つめる。
そして無意識に、自分の頭に手を伸ばしていていた。
血は繋がっていずとも、それはまさしく家族の姿。
(………)
無表情のまま、くしゃりと髪をさわる。
記憶の中のある人物のそれと重ね合わせ、(…ふっ馬鹿みたいだな)と工藤は自嘲気味に小さく口元に笑みを浮かばせた。
その時
工藤の携帯が不気味な音を立てて震えた。