そして俺は、君の笑顔に恋をする
「じゃあハナさん、先ほども言ったように俺が帰るまでここからでないように。黒瀬とここにいてください。部屋の外には門衛と刑事が交代でいますから、何かあったら彼らに言ってください」
そう言って工藤は足早に部屋を出ていった。
閉じられた玄関のドアを、その前に座ってじっと見上げるオリオン。
黒瀬も同じように扉のほうを見つめていると、それに気づいたハナが興味深げに話しかけてきた。
「どうしたの凪ちゃん、工藤さん行っちゃってさびしくなっちゃった?」
「…!! そ、そんなじゃないっ」
「あやしいわねーー」
ニヤニヤしながらそんなことを言うもんだから、恥ずかしくなって思わず否定する。
滅多に見ることのない黒瀬の慌てた様子に、ハナはほっこり温かい気持ちに。
「いい人よねー優しくて気遣い出来て、すごく頼りになるしお金持ち。おまけにその辺の男よりかっこいいんだもん。相当イケメンよ!」
「…工藤さん彼女いるよ、すごく美人の」
「ホント?やっぱり、いい男には空きがないのよねえ昔っから。ざんねん」
「……お兄ちゃんは?」
「あら、私は誠一郎さん一筋よ。凪ちゃんの話に決まってるじゃない。好きなんでしょ?」
ハナの爆弾発言に、途端に黒瀬は顔真っ赤。
のんきにコーヒーをすするハナにあわあわとして断固否定する。
「はあっ!?なななん何言って…!!?」
「好きになったんじゃないの?」
「なってない!!」
「またまたぁ、好きなくせに」
「ちがう!!!」
黒瀬の慌てようをおかしそうに笑い、ハナは目を細めて言う。
「…誠一郎さんに似てるもんね工藤さん、冗談抜きで」
「……!」
黒瀬はびくりと肩を揺らす。
図星を突かれたから。
「…ハナさんも、そう思う?」
尋ねると、ハナは「ええ」とニコニコ笑いながら頷いた。
「初めて会った時はそう思わなかったけどね。でも今日、不意に見せる笑顔とか優しさとか、仕事ってなった時のあの真剣な顔とか。顔は全ッ然、全く似てないけど!ふふっ」
工藤さんの方がイケメンよね
ハナが冗談交じりにそう言ってクスクス笑う。
「私も…そう思う…、時々だけど」
思わず口に出してしまったことに気付いたときには既に手遅れ
「へえぇ、そーなんだあぁぁ」と、ニヤニヤするハナにより一層質問攻めにされることを察し、顔面を真っ青にするのだった。