そして俺は、君の笑顔に恋をする
...
その日の夜
警官たちは警護の為玄関の外に数人残り、雪村たちは明日に備えて警視庁にいったん帰り計画を立てることになった。
あの電話の後、黒瀬はご飯も食べずに自分の寝室にこもっている。
工藤もまた、部屋の奥にある自室に居た。
7畳程の広さにあるのは黒いベットと小さな机だけ。
その机の上には写真立てと古い携帯が一つずつ。
机の前に立ち、その写真立てを見つめる工藤
「………」
無言でそうしていると、
キィ…と小さく音を立てて扉が開いた。
「…!! 黒瀬…」
そこに立っていたのはオリオンを抱いた黒瀬だった。
「…どうか、したのか?」
(って、当然か…何も解決してないもんな、不安で寝れないに決まってるよな…)
「……工藤さん…部屋、入っていい?」
「ん、おいで」
ベッドに腰を下ろし、隣をポンポンとたたく。
初めて入る工藤の部屋を物珍し気に見ながら、おそるおそる中へ歩みを進める。
そして工藤の隣にぽすっと座った。
「…寝れないのか?」
「…うん……」
暗い表情の黒瀬を見て、工藤は申し訳なさそうに声を漏らす。
「ごめんな、俺が不甲斐ないばっかりに…」
「!そんなっ…」
「俺がもっと注意を払っていればハナさんを巻き込まずに済んでた。黒瀬がそんな顔せずに済んだんだ。警護まかされたってのに、刑事失格だよ」
「そんなことないっ!!」
黒瀬はそう言って工藤の腕をつかむ。
出会った当初は触れることも触れられることも嫌がっていたというのに。
何の躊躇いもなく、ぎゅっと。
掴まれた工藤は驚いて目を丸くする。
「工藤さんは間違ったことしてない。爆弾止めたのだって工藤さんがいなきゃ出来ない事だった!それに警護の対象は私で、ハナさんまでっていう話じゃなかったし…そ、それにずっと、ほとんど寝ずに警護してくれてたしっ」
「…ははっ、何必死になってんの」
「あ、」
はからずも工藤を励ますような言葉を言ってしまったことに気が付いた黒瀬は、工藤に笑われ顔を赤くさせた。
「~~ッ私は!」
「ん?」
「…私は、ただ…工藤さんは、刑事失格なんかじゃないって…言いたかった……だけ、だもん」
(だもん、て…)
口を尖らせ、頬に赤みを残しながら呟く。
不器用なその姿を、目を細め妹を見るような優しい眼差しで工藤は見つめる。