そして俺は、君の笑顔に恋をする
...
朝、日が昇るより早い時間
黒瀬は目を覚ます。
懐がやけにあったかくて布団をめくるとオリオンが丸くなって眠っていた。
くすっと笑いながら眠気眼を覚ますべく、大きく伸びをする。
そうして布団から出ようとしたその時、ここがいつもの寝室と違う事に気が付いた。
(あ、…ここ、工藤さんの…あのまま寝ちゃったんだ…信じらんない、ハナさんが大変な時に…!!)
自分のとった行動に思わず赤面する黒瀬。
起きたの?とオリオンがもぞりと動き出す。
「にゃあ…」
「オ、オリオン…!!なんで起こしてくれないのッ」
「??」
「うぅ~…恥ずかしい」
恥ずかしくて悶えつつも、しばらくして漸く動き出した。
オリオンと共にベッドを降りる。
「工藤さんどこだろう…あれ?」
布団をたたんで部屋を出ようとしたとき、机の上の写真立てが黒瀬の目に留まった。
「…これ、小さい工藤さん…?」
そこに写っていたのはまだ七歳にも満たない子供の工藤だった。
隣には無精ひげを生やしサッカーボールを抱えてピースをしたおじさんがはにかんでいる。
(誰だろう…)
写真立ての横に置いてある携帯の持ち主だろうか。
酷く傷だらけで使い古された随分昔の型の携帯だ。
今も充電器が繋がれている。
どうして今もこうしているのかは分からないが、この殺風景な部屋にこれだけしかないのだから、何かしら意味のあるものなのだろう。
(あとで…工藤さんに聞いてみようかな…)
そう思い、黒瀬は部屋を出た。
工藤はリビングに居た。
「お、黒瀬おはよう」
優しい笑顔を向けられ、黒瀬はまたしても顔を赤くする。
「~~ッ工藤さん!起こしてくださいよっ」
「いやあ、気持ちよさそうに寝てたからね…少しは眠れたかな」
今日は決戦の日だから。
その一言で、ピリリと空気が引き締まる。
黒瀬の心も。
(そうだ、今日はハナさんを助ける日…!!)
絶対に、何が何でも、助けるんだ。
強い思いを固め黒瀬と工藤はさっそく準備を始めるのだった。