すべてが思い出になる前に
0) プロローグ
通勤時間の朝の8時。
黒いリュックを背負い、家を出てクロスバイクに乗り、ペダルを漕ぎだす。
左上から眩しい太陽が差し、思わず眼を細める。
赤信号で止まり、ショーウィンドウに映る自分の姿を見て一息ついた。
たまたま通りすがった女性の背中を見て、高校を卒業後、連絡が取れなくなった大切な友人がいた事をふと思い出す時がある。
その友人がいなくなってから、当たり前が当たり前じゃなくなって。
全てを失ってから初めて気付いた事がある。
【 当たり前の日常なんてないんだと。】
大学の駐輪場にクロスバイクを置いて、校舎へ向かう。
教室に入ると数人の友人が俺の元へ寄ってきた。