すべてが思い出になる前に
声が聞こえなくなり、心配した翼は電話越しで何度も俺を呼んだ。
「もしもし涼太?涼太?どうしたんだよ〜」
「ごめん。で、何の話ししてたっけ?」
「みんな元気にしてるかって話だよ‼︎」
「あぁうん、照史も茜も元気だよ」
「じゃあ来週楽しみにしてるからな♩」
「おぅ」
電話を切ると、携帯の待ち受けの時間は23:20になっていた。
暗い廊下に立っていたせいか、急にライトを向けられ眩しくて目を細めていると、警備員が巡回に来ていた。
「まだ残りますか?」
「いいえ、今から帰ります」
「そうですか、戸締りだけはお願いします」
「はい、分かりました…」
そそくさに研究室に戻り、荷物を持って研究室を後にした。