すべてが思い出になる前に
翌日
授業が終わり、リュックを肩に掛けて椅子から立ち上がろうとした時に、ポケットに付けていた名札ケースを落としてしまった。
名札を落としたことに気づかず、教室を出ようとした時
腕を軽くトントンと叩かれ振り返ると大学院の同級生、富永琴未(とみながことみ)が立っていた。
「はいこれ、落としたよ」
彼女が手渡したのは、『宮﨑涼太(みやざきりょうた)』と書かれた俺の名札だった。
「全然気づかなかった、ありがとう」
手渡された名札をポケットに付け直していると、富永が涼太が身につけていた腕時計を見た。
「ねぇ、今からお昼?一緒に食べない?」
「あぁ、いいけど…」