すべてが思い出になる前に
照史は持っていた缶ビールを飲み干し、スッと立ち上がった。空いた缶ビールをキッチンに置いて冷蔵庫から新しい缶ビールを取り出し、立ち去ろうとした時だった。
ふと奥の部屋の扉が少し空いているのに気付いた。さっき翼にズボンを貸した時に開けた涼太の寝室だろうか、照史はその部屋に入って行った。
「ん?」
低いタンスの上には、テニスの試合後と高校の卒業式後に撮った5人の写真が飾られていた。
写真立てを持ち上げて見ていた照史は、写真に映っている友理奈をじっと見た。
友理奈がいた存在はすごく大きかった。それが居なくなって気付くのは遅いんだと気付かされた。
写真を元の位置に戻した照史は、涼太の寝室をグルッと見渡した。