すべてが思い出になる前に
研究室を出ようとした途端に、講師の先生に声を掛けられた。
「宮﨑、教授が14:00に部屋に来いって」
「はい、分かりました」
講師の先生が立ち去った後、同期の鴨川 奨(かもがわしょう)が声を掛けて来た。
「大学院生が教授に呼ばれる事って滅多にないよな。医局員でもあるまいし」
「そうだな。ちょっくら行ってくるよ」
「おぅ‼︎」
廊下を歩き、教授室の目の前で立ち止まり1度深く深呼吸をして息を整えた。
教授に会うだけでも、すごく緊張する。
扉を2度叩き、反応を伺った。
「はい‼︎」
「失礼します。宮﨑です」
扉の向こうには、教授が黒い椅子にドッシリ座って待っていた。