すべてが思い出になる前に
「宮﨑くん、今書いてる論文を今度の10月に開催される京都の学会で発表しなさい」
「学会ですか…」
「大学院を卒業する為には、何回か学会で発表しないといけないからね」
「分かりました」
教授室を後にして、右手で首元を触りながら研究室へ戻って行った。
持っていた白衣を羽織る涼太の隣で、鴨川が携帯をいじりながら話しかけて来た。
「今度の学会で発表するらしいね」
「あぁ、今から英文に書き直しだよ」
「俺も学会に行って宮﨑の発表聴きに行くよ」
「いいよ、来なくて」
涼太はチラッと横目で鴨川の顔を見て、再び正面を見た。