すべてが思い出になる前に




家に残された翼は、むくっと起き上がり用意されたコーヒーを一杯飲んで家の中を散策し始めた。


涼太の寝室を見つけて入るとすぐに、低いタンスの上に写真立てが2つ飾られているのに目がいった。


写真に映っている幼馴染5人の写真を持ち上げて、翼は低い声で呟いた。



「歳を重ねるごとに、どんどん疎遠になっていくんだな」



友理奈と連絡が取れなくなって以来、一人一人とは会うものの、毎年集まっていた恒例行事は行えなくなっていた。


疎遠とはこういうことなんだなと身に染みて思うようになった翼も、いつもは明るく振舞っているが内心、涼太や照史には言わないだけであって同じことを思っていた。





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