すべてが思い出になる前に
「涼太はそれでいいのか?見つけたのなら、すぐにでも俺は捕まえに行くけどな」
そう言い残して翼は家を出て行った。
翼は俺にどうしろっていうんだろう。
この世界にいる限り、元気にしてるならそれでいい。その他に思うことなど何もなかった。
学会が近づくにつれ、教授に論文の確認をしてもらったり、アドバイスを貰いながら訂正の作業にあたり始め、バタバタする日々が続いた。
通りかかった富永が、必死にデスクワークをしている涼太の肩をポンと叩いた。
「宮﨑くん、京都のお土産は八つ橋ね!あんこ抜きの生八ツ橋よろしく♪」
涼太は後ろを振り返り、ニコニコ笑う富永を見た。
「甘いの苦手なのか?」
「女子がみんな甘いのが好きかっていうと大間違いだぞ!」