すべてが思い出になる前に
「友理奈だよな?」
肩を掴み、振り向いたスタッフの胸元のポケットに”堤”と刻まれた名札が付けられていた。
首元に赤と黒のスカーフを巻き、白の開襟シャツに黒のスーツを綺麗に着こなすグランドスタッフの女性は、高校卒業して以来会っていない友理奈だった。
「涼太…」
お互いをじっと見ていると、背後からスーツケースをゴロゴロと引っ張って走る音が近づいてきた。
「宮﨑、何してんだよ行くぞ‼︎」
涼太は後ろを振り向き、鴨川が叫んでいるのに気付いたが、もう一度友理奈の方に向き直した。