すべてが思い出になる前に
「今、何か隠しませんでしたか?」
「あっ、やっぱりバレた?」
「先輩、隠し事とか水くさいですよ〜」
友理奈は渋々、名刺を元倉に見せる事にした。
「さっき幼馴染にばったり会っちゃって…」
「幼馴染と仲良いなんて、今時珍しくないですか?」
「そうなのかな?でも8年も会ってなかったから、まさかと思って」
コーヒーを口に含んでいると、元倉は名刺を見てニヤニヤし始める。
「この人、薬学研究室…もしかして薬剤師さんですか?」
「ちょっとしか話してないから詳しい事は何も分からない」
ふぅ〜んと相づちを打つ元倉の様子がいつもと違うのが、隣でひしひしと伝わってくるのが分かる。