すべてが思い出になる前に
「そっか、そうだよな。1人や2人はいるよな」
友理奈には彼氏がいた。それを聞いた瞬間に悲壮感を抱いたが、冷静を保ちながらコーヒーを飲み干した。
店を後にして、電車を待つホームで隣にいる友理奈に視線を移すと、高校時代の懐かしい思い出が蘇った。
「涼太、涼太‼︎」
友理奈が何度も呼んびながら、ぼーっとしている涼太の右腕を軽くトントンした。
「あぁ、ごめん。考え事してた」
「考え事?」
「学生時代、放課後にさ友理奈と茜に駅のホームでバッタリ会ってたなと思ってさ」
涼太には、セーラー服に革のバッグを片手で持つ友理奈の立ち姿が目に浮かんでいた。