すべてが思い出になる前に
「手で弾いたブーケがたまたま俺の手元に飛んで来たんだ。そのブーケは、幼馴染にあげた」
机の上にある資料を片付け始めた涼太は2人とすれ違い、咄嗟に鴨川が声をかける。
「宮﨑、どこ行くんだよ⁈」
「これからバイト、じゃあな」
そう言い残した涼太は急ぎ足で、研究室から出て行った。
「男がブーケを取った話しなんて、聞いた事ねぇよな」
「やっぱり宮﨑くんは何かを持ってるよね」
富永は笑いをこらえきれず、鴨川の肩をバシバシ叩いた。
膨大の資料を倉庫にしまい、着ていた白衣をハンガーに掛け、リュックを背負い勢いよくロッカーを閉めた。