すべてが思い出になる前に




「私ばっかり話してごめんね」



無理をして笑ってごまかす友理奈だったが、横目でじっと目を見つめる涼太に思わず首を傾げた。


涼太は友理奈と真っ正面に向き合い、右膝を立てて座り直した。



「気にすんな。それで話は全部か?」


「うん、もう大丈夫‼︎全部話したら、なんかスッキリした‼︎」



友理奈はいつものクシャッとした笑顔になり、両腕を上げて背伸びをし始めるのを隣で見ていた涼太は、何を思ったのか友理奈の頭をわさわさと撫でた。



「じゃあもうその男の事は、早い内に忘れた方がいいぞ」



缶ビールを飲み干した涼太はその場から立ち上がり台所へ向かうその後ろ姿をじっと見ていた友理奈は、さっき頭を撫でられたところを右手で触り、余韻に浸っていた。







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