すべてが思い出になる前に
「その声は翼だろ?分かったから離れろ‼︎」
両目を隠した手の平を必死に叩く涼太に対し、翼はゲラゲラ笑っていた。
「連絡くれたじゃん、遅くなってごめん‼︎」
「遅いよ。んーまぁでも、まだビール残ってるし飲むか‼︎」
そう言って翼の肩を組んで涼太の家へ向かった。
友理奈に言いかけた事があったが、次会った時にタイミングが合えば話そうと心の中でそう呟いた。
また会えるのが当たり前だと思っている日常は、当たり前ではない。
一度そういう経験があったのにも関わらず、再び同じ事をしてしまう。安易な考えは辞めようと思っていたのに…。