すべてが思い出になる前に
元倉を羨ましく思いつつ、目をじっと見つめて…と心の中で呟いていると、高校時代に図書館の学習室で起こった出来事を不意に思い出してしまった。
顔を上げた瞬間、目の前に涼太の顔が近距離にあって、思わずその場から逃げた事を。
「先輩、先輩⁈」
何度も呼ばれて肩を叩かれやっと気付き、振り向いた途端に友理奈の顔を見て、元倉は思わず笑い始めた。
「どうしたんですか?顔が赤いですよ?」
「えっ本当に⁈」
両手で顔を挟んだ友理奈だったが、既に遅し。
「私の話に何か心当たりでもあるんですか?それともあれですか、思い出し笑い?」
フフフと笑う元倉に対して、友理奈は赤面を隠すようにそっぽを向いた。