すべてが思い出になる前に
友理奈は目の前にあったテニスシューズに目が入り、すかさず手に取った。
グレー/シルバー/ブラック、三色デザインのテニスシューズをじっと見ていると、翼が隣で商品説明をしてくれた。
「さすが友理奈、お目が高いね‼︎それ、昨日入って来たばかりのブランドとコラボしたシューズなんだ。このシリーズは凄く軽くて走りやすくて最高なんだ‼︎」
「へぇ〜」
「照史から聞いた話なんだけどさ、涼太がもう一度テニスしようかなって、最近ジムに通い始めて筋トレしてるらしい。また涼太とテニスがしてーなー。まぁ、当然俺の方が上手いけどな」
また涼太がテニスを?
もう二度と、テニスをしない。ラケットを再び握る事はないだろうと思い込んでいた。