すべてが思い出になる前に
駅の改札口を通過して、電車のホームまで長い階段を駆け上がった。
階段を上ったところで周りを見渡し、友理奈を探した。
「どこにいるんだよ…」
靴の箱を右脇に抱えながら、ホームを走り回っていると、電車が右からやって来た。
電車が止まって扉が開いた瞬間、電車から乗客が下車した後、次々と乗り込んで行く乗客の列の中に友理奈の姿を見つけた。
「友理奈‼︎」
涼太は叫んだものの聞こえないのか、前の人に続いて電車に乗り込もうとしていた。
走って追いかけ、乗り込む寸前だった友理奈の右腕を掴んで列から外れた。
「何?どうしたの?」
突然腕を掴まれて驚く友理奈に、涼太はそっと手を離した。