すべてが思い出になる前に
手を離した瞬間、涼太は真っ直ぐな目で友理奈を見ている時に、目の前の電車が出発していった。
「誤解するようなことしてごめん。本当は凄く嬉しかったんだ。俺の為に選んでくれたんだなと思って。研究に追われて自分の誕生日さえ忘れてたから、みんなから祝って貰って嬉しかった。ありがとう」
「私こそ、急に家を飛び出したりしてごめん」
2人の間に沈黙が続く中、友理奈は涼太の右脇に抱えていた箱を見た。
「もしかして…靴を持って追いかけて来てくれたの?重かったでしょ?」
「いや、そんなこと考えてる余裕なんてなかった」
友理奈はクシャッとした笑顔を見せ、その笑顔に安心した涼太は友理奈を抱き締めた。