すべてが思い出になる前に
涼太の弱点を知る翼はラリー戦に持ち込み、涼太は左右に振られ走り回っていたが、それは一瞬にして状況が変わった。
涼太は必死に翼が放つボールに食らいついていたが、返ってきたボールが目の前にした瞬間に、少し高めの甘いボールだった。
「しまった…」
フォアハンドでラケット面の中心より、ちょっとだけ下に当たったボールにスピンがかかり、ラケットで力強く打ち返したボールは、サイドラインギリギリに入っていた。
コートの外で見ていた同級生や後輩達が声を上げた。
「ブランクがあるとは思えない…」
「宮﨑さん、怪我さえなければプロになれたのかな」
観戦していた人達は皆そう口を揃えるが、当本人の気持ちは誰も分からない。