すべてが思い出になる前に
友理奈はクシャッとした屈託のない笑顔を見せた。
今目の前で友理奈が笑っている。俺ってやっぱり友理奈の笑顔が好きなんだと、この笑顔をいつまでも絶やさないで欲しいと思うのであった。
涼太はいきなり友理奈を抱きしめ、突然の出来事に驚いた友理奈は思わず声に出した。
「わっ…どうしたの⁈」
「なんとなく、したかったから」
抱きしめていた身体から離れ、顔を上げた友理奈は上から見下ろす涼太と目が合った。
少し濡れた髪が色っぽく見えるのは気のせいだろうか、ジッと目を見つめていた涼太は、友理奈の左頬にそっと手を伸ばした。
一瞬ビクッとした友理奈は頬を赤くして俯いた。
友理奈の表情を見て、フッと笑った涼太は目を瞑る。
引き寄せる強い力に驚く間もなく感じたのは、唇から感じる温かくて柔らかい。
ジンジンと感じる甘い痺れ、初めてのキスは触れるだけの優しいものだった。